ナイジェリアの精神医療

 ナイジェリアはブラック・アフリカ諸国のなかでも比較的古くから近代的な精神医療サービスが提供されてきた国のひとつです。ナイジェリア最初のアサイラム(精神障害者の収容施設)がカラバーに開設されたのは、イギリス植民地統治下の1903年のことでした。しかし、アサイラムは医療施設というよりも「座敷牢」に近い収容施設でした。その後、植民地時代にアサイラムは精神病院へと移行しました。現在、ナイジェリア全土には少なくとも11の専門精神科病院が開設されています。このほか、各地の大学付属総合教育病院などにも精神科病棟があります。とはいえ、ナイジェリア全土の精神科医の数は全体でも100人に満たないのが現状であり、その医療福祉サービスの提供レベルは依然として極めて限定的なものといわざるをえません。

■アロ村システム
 ナイジェリア初の精神科医であるドクター・トーマス・ランボーは、1950年代中葉、南部の都市アベオクタ郊外のアロにある精神科病院の近くに精神障害者とその親類を住まわせ、全土から集めた15名の伝統的治療者の協力を受けながら治療にあたるという「ヴィレッジ・システム」を開始しました。写真は現在のアロ村の様子です。精神障害者が村やその周辺に暮らす状況は散見されましたが、いわゆる「ヴィレッジ・システム」と呼ばれていたものは、ほぼ完全に「消滅」していました。

 

■アロ精神神経科病院の女性病棟
 アベオクタ郊外のアロにはナイジェリア有数の精神科病院があります。ラントロという場所にアネックスがあり、全体の病床数は500を超えます。ラゴスのヤバにある精神病院の方が設備的にも人材的にも充実しているようにみえましたが、アロは広い病院敷地が豊かな緑に囲まれており、とてものどかで落ち着きます。

 

■ラゴス大学付属総合教育病院(LUTH)の精神科病棟
 ラゴスのイディアラバ地区にあるラゴス大学付属病院(Lagos University Teaching Hospital: LUTH)には精神科病棟があります。しかし、施設の老朽化がひどく、入院費用も比較的高額なためか、入院患者はほとんどいませんでした。他方、同大学医学部精神科の外来診察はヤバ地区にある診療所で週1度行われており、多くの外来患者が来院していました。