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Graduate School of Law

法学研究科

研究科長メッセージ

法学研究科長

学校教育法99条1項は、大学院について次のように規定しています。「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする」。

これを受けて、龍谷大学・法学研究科は、「『真実を求め真実に生きる』という建学の精神と日本国憲法の理念を基礎に、法学・政治学の領域で高度な研究・教育を通じ、世界と地域で活躍し、共生(ともいき)の社会を担う、人権感覚に溢れた研究者及び専門職業人の養成を目的とする」。

私立大学ですから、「建学の精神」が柱に据えられるのは当然と言えば当然ですが、それとならんで「日本国憲法の理念」が挙げられていることを忘れないようにしたいと思います。「日本国憲法の理念」にもとづいた「学術の理論及び応用」の「深奥をきわめ」ることが求められているのでしょう。

その際、重要だと思われるのは、与えられた状況という限界を自覚しつつ、具体的に考えるということではないでしょうか。

カール・マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール一八日』の冒頭(大月書店版・マルクス・エンゲルス全集第8巻107頁)には、次の有名な文章が掲げられています。

「人間は、自分で自分の歴史をつくる。しかし、人間は、自由自在に、自分でかってに選んだ事情のもとで歴史をつくるのではなくて、あるがままの、与えられた、過去からうけついだ事情のもとでつくるのである」。

ここには、歴史の重要性と「意思ないし意志の自由」をめぐる洞察が現れています。そのことをある哲学者は、次のように表現しています(國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』医学書院、2017年、285頁)。

「歴史は人間が思ったようにつくり上げたものではない。だが、それは人間がつくった歴史と見なされる。ここにこそ、歴史と人間の残酷な関係がある。人間が参照の枠組みを選んだことなど一度もない。人はすぐ目の前にある、与えられた、持ち越されてきた参照の枠組みのもとで判断を下すほかないのである」。

私たちの意識や思考も、与えられた状況の産物であることを免れません。しかし、多様な情報源にあたり、さまざまな人びとの意見にできるだけ耳を傾ける態度を見失わないことによって、一面的な報道や評価に惑わされることなく、「持ち越されてきた参照の枠組み」を豊かにすることができるし、その下であたうかぎりの妥当な判断ないし評価・選択をすることができるのではないでしょうか。

大学院では、したがって、法学・政治学に沈潜するのではなく、他の多様な学問領域の蓄積にも学びつつ、また、教員や院生その他からなる学問共同体のなかで議論をかさね、「学術の理論及び応用」の「深奥」に近づいていただければと思います(もとより全く近づけていない私が言うのもおこがましいのですが、ここは立場上の言説と言うことでご海容願えればさいわいです)。

教職員一同、院生の皆さんの豊穣な研究活動のために、できるかぎりの援助をしたいと考えています。

2024年4月
法学研究科長 武井 寛

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