▼解決を目指す「社会課題」
小松原 知明さん
2年生(兵庫県 雲雀丘学園高等学校 出身)
小林 峻明さん
3年生(新潟県 新潟産業大学附属高等学校 出身)
橋本 符紗子さん
1年生(大阪府立泉陽高等学校 出身)
瀧口 菜友さん
1年生(大阪府立池田高等学校 出身)
学生法律相談部では、法的な知識の有無によって生じる情報格差という社会課題と向き合っています。例えば、アルバイト先でのパワハラや不当な勤務シフトの変更、SNSでの誹謗中傷被害、突然の契約解除など、日常生活で直面する法的課題は誰にでも起こり得ます。しかし、「弁護士に相談するほどでもない」「相談料が高そう」といった理由で、適切な法的支援を受けられない人が多く、特に近年は、コロナ禍での解雇や賃金未払い、オンラインでの契約トラブル、リモートワークに関連する労働問題など、社会変化に伴う新たな法的課題が増えてきました。そこで私たちは、教員の指導のもと、より親しみやすい学生の立場から完全無料で法律相談に応じています。「使用者の安全配慮義務」という専門用語を「働く人の安全や健康を守る会社の責任」と言い換えるなど、法の専門用語を噛み砕いて説明し、相談者に寄り添った対応に努めています。
この活動は、月2回のキャンパス内での無料法律相談が基本です。最近の相談事例としては「オンラインショッピングで商品が届かないのに返金に応じてもらえない」「アルバイト先でシフトを一方的に変更された」「SNSで誹謗中傷を受けている」「親の介護と相続について家族間で意見が対立している」といった案件があります。これらの相談対応を重ねるなかで、法的支援を必要とする人々が身近な地域にも多くいることを実感しました。そこで私たちは活動の範囲を広げ、関西圏外での相談会も実施しています。地方都市では法律事務所が少なく、相談できる機会が限られているからです。2024年度は「龍谷大学法学部同窓会50周年事業」として、鹿児島県で相談会を行いました。弁護士をはじめ、司法書士・税理士・社会保険労務士など、さまざまなフィールドで活躍されている卒業生の方々にもご協力いただき、先輩方の努力が今に結びついていることを実感しました。
私たちは単なる法律相談ではなく、相談者の心情に寄り添うことを重視しています。例えば、職場でのパワハラ相談では「具体的にどのような言動があったか」といった事実確認にとどまらず「そのような対応を受けて、どう感じたか」と相談者の心情も丁寧に聴き取ります。また、週1回以上の部内勉強会では「相続問題で感情的になった相談者への対応」「消費者トラブルで不安を抱える高齢者への説明方法」といった実際の相談事例をもとに、より良い対応方法を議論しています。さらに、現役の弁護士の方にご協力いただき、実務家の方々から相談技術やコミュニケーションスキルを学ぶ研修も定期的に実施しています。特に力を入れているのが、ジェンダーや多様性に配慮した対応です。LGBT+の方からの差別相談やDV被害者からの悲痛な悩みなど、デリケートな案件にも適切に対応できるよう、専門家を招いた勉強会でも学びを深めています。
この活動に参加するようになり、法律の実務的な理解が深まりました。労働問題の相談では、労働基準法について「なぜこの規定が必要なのか」「どのように労働者を保護しているのか」といったことをより具体的に理解できます。最近では「学生さんに相談して良かった。私の気持ちもわかってくれて、法律的な解決方法も教えてもらえた」「若い人の意見も聞けて新しい視点が得られた」といった感想をいただくことも増えてきました。相談活動を通じて得た経験は、就職活動や法科大学院への進学にも活かされています。実際に昨年度の卒業生のなかには、この活動での経験を活かして法科大学院に進学した先輩や、企業の法務部門へ就職した方もいます。相談者との対話、主体的に考え行動した経験によって培われた問題解決能力とコミュニケーション力は、法曹界に限らず、どのような進路を選んでも必ず役立つ財産となるに違いありません。
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▼解決を目指す「社会課題」
鈴木 奈那美さん
2年生(静岡県 浜松日体高等学校 出身)
西川 彩葉さん
3年生(京都府立鴨沂高等学校 出身)
法政アクティブリサーチは、学生が主体となって社会課題の解決に挑む、実践型の授業です。担当の先生やアシスタントの力を借りず、事前学修から成果報告書の完成に至るまで、すべて自分たちの手でやり遂げます。設定されている5つのテーマ「多文化共生」「社会的支援」「災害とラジオ」「医療の可能性」「平和」にもとづいてクラスごとに調査テーマを設定し、専門的な文献の読解やディスカッション、資料収集をすすめていきます。もっとも特徴的なのは「外部とのつながり」があることでしょう。政府機関や地方自治体、NPO、民間企業などへのヒアリング調査が必須となっていて、調査結果をまとめた成果報告書は、社会にも発信・還元されます。実社会と直接つながる調査研究をとおして、法制度や政策に対する批判的・創造的な考察力、法学・政治学の専門的な知見、対話を通じたコミュニケーション力など、社会人に求められる資質が備わっていきます。
グローバル化が進み、日本でも「多文化共生」は重要な社会課題となっています。そうした背景をふまえ、私たちは「多文化共生への取り組み」をテーマに選びました。外国人急増による日本人との摩擦や人種差別など、当事者から話を聞くことが調査の肝になるでしょう。どのように活動をすすめていくのか、現地調査スタートに向けて準備しているところです。今までは、ニュースや新聞で報道される社会問題を、どこか他人事のように思っていました。誰の身にも起こりうる出来事でも、自ら調べて行動を起こす機会がなかったからです。法政アクティブリサーチがはじまり、私たちの意識にプラスの変化が生まれています。表面的な知識としてとらえていた社会問題がリアルに起こっている事象であると理解できるようになり、自分がどのように行動すればよいか日常的に考えるようになりました。今後の活動で、さらに実践力を鍛えていきます。
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▼解決を目指す「社会課題」
永田 絢子さん
3年生(高等学校卒業程度認定試験)
刑事法ゼミ討論会では、提示された事例問題・テーマを各ゼミで検討し、導き出した結論を他のゼミに発表します。今回は「自殺は適法であるか否か」という問題と向き合い、人の生命や自己決定権について、法律の観点からどこまで保護や制限が可能かを探究しました。現行法や慣習、国民の権利など、ゼミごとに異なる視点から「生命」の解釈に関するさまざまな見解が出され、かなり白熱した議論が交わされました。法律は国民の権利を守るために存在し、現代社会に必要不可欠です。しかし、私たちが取り上げる刑事法は、国民の人権を守る一方で、時として人権を侵害する可能性が高い分野です。相反する性質をもつ法律について、感情に惑わされることなく理論的に考察し、人権に対する意識の適否や社会のあり方を考えなければなりません。生命の尊重という価値観と個人の自己決定権との関係性など、重要な問題に対して、法的な観点から検討を重ねました。
私たちが検討したテーマはセンシティブな社会問題であり、一見すると具体的な解決策がないように思えます。しかし、一人でも多くの人が問題意識をもち、向き合うことで何かが変わるかもしれません。法律は私たちの社会生活と密接に結びついています。だからこそ、個々の問題意識が社会を変える原動力となり得るのです。今回の意見交換では、これまで以上に大きな学びがありました。特に印象的だったのは、同じ事例問題でも各ゼミによって重点の置き方や論理の組み立て方が異なることでした。文献を批判的に読み解き、ゼミの仲間と議論を重ねていくなかで、一つの問題に対して多角的な視野をもつことの重要性を強く意識するようになりました。さらに、仲間と共に法律を探究する楽しさ、共同研究の難しさも改めて実感しています。自分にはない考え方、新たな視座や知見を得られる、非常に有意義な学びの場でした。
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吉田 一期さん
3年生(奈良県立桜井高等学校 出身)
私が嶋田ゼミを選んだのは、先行研究の少ない「社会保障法」を学べる点に魅力を感じたからでした。ゼミでは、私たちの生活に深くかかわる医療保険や労災保険など制度の仕組みについて担当者が報告し、先生やメンバーと意見を交わしながら実社会の問題点を洗い出します。嶋田先生が学生一人ひとりの考えを丁寧に引き出してくださるので、未知の分野でも理解が深まります。社会保障は、私たちの健康的な暮らしを守る重要な制度である一方、例えば、公的扶助として存在している生活保護の場合、受給者に対する世間の厳しい目があります。自分たちで問題点を検討するうちに、身近な社会課題にも目が向くようになりました。社会保障における社会権は憲法や人権などにも関係する重要な問題です。制度と人権、その両方からアプローチすることで、解決のヒントが見つかるかもしれません。持論と他者の意見を比較検証しながら視野を広げ、人間的にも成長していきたいと思います。
太田 佑音さん
3年生(奈良県立畝傍高等学校 出身)
行政とのかかわりから社会保障法を学べる点に魅力を感じ、嶋田ゼミを選びました。ゼミでは、労働問題を中心に、私たちの暮らしと密接に関連する社会保障制度について学びを深めています。学生にとって身近なアルバイトという実体験と結びつけながら、労働者の権利や保護に関する問題点を見つけ出し、メンバーと活発に議論を重ねています。自らの経験と照らし合わせて考えることで、当初は馴染みの薄かった社会保障法も、より能動的に考察を深められるようになりました。特に印象に残っているのは、他大学と合同で行ったゼミの研究発表です。異なる視点から導き出されるさまざまな意見を通じて、新たな気づきを得られただけでなく、自分の考えを論理的に伝える力も養われました。社会保障法は、行政や憲法、労働法などさまざまな法分野と関連しています。今後も幅広い視野をもちながら、現代社会の課題解決に向けた研究をすすめていきたいと考えています。
日髙 大輔さん
3年生(京都府 龍谷大学付属平安高等学校 出身)
法哲学とは単なる法律の解釈にとどまらず、法律の倫理や正義といった法律の根幹となる哲学を深く考察する学問分野です。法哲学は、既存の思想の根底を疑うことからはじまります。教科書や授業による学びは、既存の思想を正しいと信じ込み、そのまま受け入れてしまいがちです。しかし、その内容に疑問をもつことで、新たな見解が見えてきました。また、少人数のディベートを通じて他者の意見に触れ、多角的な視点から物事をとらえられるようにもなりました。現在は「AIによる監視社会」をテーマに卒業研究をすすめています。iPhoneに搭載されているSiriは呼びかけるとすぐに反応してくれる便利なツールです。その一方、疑うという観点から考えると、便利なだけでは済まされない「AIによる監視」という社会問題が浮き彫りになります。まずは疑ってみるという意識が、物事の本質につながっていくのではないでしょうか。ゼミで得られた思考力は、将来も必ず役立つスキルになるはずです。
飯原 彩音さん
3年生(京都府立乙訓高等学校 出身)
法哲学は、法律や法制度、社会の仕組みを根本的に問い直し、誰のために、どの立場から見た正義実現のために存在しているかを考える学問です。ゼミでは「法と正義について考える」をテーマに各々が興味をもった文献を選んで講読し、提示される議題に沿って議論を重ねました。社会課題は複数の要因が絡み合って形成されています。そのため議論は毎回白熱し、次回に持ち越されることもあるほどです。こうした議論によって、自分の主張の弱点に気づき、譲れない軸を見出すことができました。現在は「ロバート・オーウェンのユートピア社会主義」に着目し卒業論文をすすめています。貧困や恐怖のない協同組合主義社会の実現をめざしたオーウェンの思想は、現代にも通じる新しい視点を与えてくれました。民主主義や資本主義に代表される既存の法律や法制度に正義は存在するのか。社会通念に流されず疑う姿勢は、答えのない社会課題と向き合う力になると確信しています。