インドでは、紀元前1200年頃に編纂された『リグ・ヴェーダ』をはじめ、古代から膨大な文献資料が生み出されました。そのため、様々な文化・思想がいつ芽生え、どのように発展してきたかを跡づけることがしばしば可能です。世界の他の地域ではとうてい辿り得ないような歴史上の動きが、多くの文献記述から浮かび上がってくる時のワクワク感に魅了されています。

遠い過去の文献を読むことに夢中になっていた大学時代、恩師の一人（フランス語の先生）から「今は歴史に没頭していて良いが、いつかその研究を通じて現代社会にどう寄与するかを考えないといけないよ」と言われました。その時から、恩師の言葉を研究目標として意識しはじめ、自分が学んだことを教育の場で生かすことのできる大学教員を、自然と目指すようになりました。

座右の銘というほどではありませんが、遠い国の、大昔のことを研究しているぶん「身近なことほど大事にする」という気持ちを忘れないよう心掛けています。

授業が終わった後、教壇にいる教員にどんどん話しかけることをお勧めします。特に急ぎの時でなければ、どの教員も授業を受けてくれた学生の言葉を聞きたいものです。質問でも、単なる感想でもいいでしょう。私もそんなふうに多くの先生に話しかけ、顔見知りになり、授業からだけでは見えてこないその先生の深い専門性や人柄に触れることができましたよ。